
御前崎市久々生(くびしょう)海岸です。
久々生海岸は、1970年代から始まった御前崎港西埠頭整備により港湾用地の一部
となり、さらに2004年に開催されたわかふじ国体ヨット会場の御前崎港マリーナを含む
西埠頭の整備により、駿河湾に面した東側が埋め立てられたことで、北側のみが駿河湾に
開いた入江のような地形となった場所です。
私たち、Earth Communication(以下「EC」)が調査したところ、過去にこの海岸に藻場(以下「アマモ場」)があったという記録は残されていないことから、御前崎港の港湾整備により、徐々に砂が堆積、干潟が形成され、そこに新たに海草(かいそう)が繁殖してアマモ場ができたと考えられています。
海草に分類されるアマモとコアマモです。面積は1.1ha程度(2022年4月時点)。
アマモ20%、コアマモ80%程度と推定されます。
2019年(平成31年) 4月ごろです。
久々生海岸は港湾用地の一部となっていることから、港湾関係者以外の立入りが禁止されていた上、東側の海岸線と南側の埠頭用地との境界は高さ3m程の防波堤に囲まれているため、陸地側の外部から海岸の様子を確認することができませんでした。そのためここにアマモ場が形成されていることが確認されたのは、2017年(平成29年)12月のことです。
2018年(平成30年)には、ECとして数度の立ち入り調査が認められたことから、貴重なアマモ場があることを港湾管理者の静岡県に伝えて保全活動の必要性を訴え続けました。
定期的な保全活動を行うために海岸への立ち入りが正式に認められたのは1年後の2019年(平成31年)に入ってからでした。
海洋ごみの除去及びアマモ場に生息する生物調査を兼ねた観察会の開催が主な活動です。
現在の久々生海岸は、北側のみが海に開いた、人工的に造られた入江のような地形となっていることから、台風や暴風雨の後は、大量の海洋ごみが漂着します。海草の繁殖の障害となる干潟や海岸のごみの撤去が保全活動の中心になります。
EC主催のビーチクリーン活動参加者による人力でのごみ拾い活動のほか、港湾管理者の静岡県(御前崎港管理事務所)が重機を使って大型ごみの撤去を行っています。
これまでに80種類ほどの生物を確認しています。
ヒラメの幼魚、カレイの幼魚、アミメハギの幼魚、オクヨウジ、ヨウジウオ、ヒメイカ、テッポウエビ、エビシャコ、ニホンスナモグリ、オサガニなど、主にアマモ場や干潟に棲む生き物だけでなく、ナンヨウツバメウオやサザナミフグ、コンゴウフグの幼魚なども見つかっています。また、砂や石が堆積してできた陸地(砂浜)にはベンケイガニやアカテガニが生息し、初夏には産卵のために海岸に集まります。
先ほどもお話しましたが、最大の課題は暴風雨の度に大量に流入する海洋ゴミの撤去と処分です。
人力によるゴミ拾いだけでは限界があります。管理者の静岡県の重機が定期的に大型ゴミの撤去を行ってくれますが、干潟の上に漂着することもあり、撤去が大変な場合もあります。
アマモ場の保全だけでなく、アマモ場の増殖や移植に関する研究に取り組み、その結果を実践活動に繋げていきたいと考えています。
これまでECは、このアマモ場を保全する活動が中心で、アマモ場を増やす活動は取り組んで来ませんでした。理由は、ここのアマモとコアマモがどこから来たものなのか、どこのアマモ場の干潟や海岸に由来するものが(流れ着いて)、繁殖したのかがわからなかったため、無闇に増殖や移植を行うと、同種であっても地域によって異なる遺伝子を持つ海草の遺伝子撹乱を起こす心配があったからです。
しかしながら、2022年度に、静岡大学農学部の学生の皆さんの研究により、久々生海岸で繁殖するコアマモとアマモが、浜名湖岸のある特定地域に自生するそれらと遺伝子配列がよく似ていることがわかってきました。
今後は、アマモ場がなかった場所に新たに形成された全国的にも稀な海岸であることを強みとして、海草の移植や増殖の研究活動に取り組み、県内や全国各地で減少が続く、アマモ場の復活・再生の一助となればと思っています。
全国的にも珍しい、新たにアマモ場が形成された海岸が、御前崎にあることを知っていただきたいです。そのために、ECが開催する観察会やビーチクリーン活動に参加していただければと思います。
〒437-1622 静岡県御前崎市白羽5414-18
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