海藻や海草が集まって生育している場所のことで“海の森“とも呼ばれていています。 森の植物は、森のある地域の気候や高さによって生育する植物が違うように、 藻場に生育する海藻、海草も気候、海流の影響、海の深さなどによって異なっています。 生育する海藻、海草の種類によってアマモ場、カジメ・アラメ場、ガラモ場、コンブ場などに分けられています。
藻場は魚が産卵するのに良い場所です。茂みが流れを和らげたり、魚の赤ちゃんや子供が敵から隠れたりする場所にもなります。また、魚の赤ちゃんや子供の餌となる小型生物がいるため、多くの種類の魚が育つことができ、海のゆりかごと言われています。 魚の種類が多いだけでなく、藻場は水をきれいにする働きもあります。また、二酸化炭素(CO2)を吸収して、酸素を出すので地球温暖化対策にも大切と言われています。
藻場は海藻や海草が生い茂る場所を指します。海藻と海草はどちらも「かいそう」と読みますが、違いは何でしょうか。 海藻には、アオサ、クビレズタ(海ぶどう)、テングサ、サガラメ、ワカメ、コンブ、ノリなどがあります。 これらは色(光合成色素)によって緑藻、褐藻、紅藻に分けられ、 アオサ、海ぶどうなどは緑藻、サガラメ、ワカメ、コンブなどは褐藻、テングサ、ノリなどは紅藻になります。 海の中ではその深さによって届く光の色が異なりますが、届いた光を効率よく利用するために、海藻はさまざまな色をしています。 紅藻、緑藻、陸上植物は共通の祖先から進化し、褐藻は紅藻、緑藻とは別の祖先から進化したと考えられています。 海藻を英語では、seaweedと言います。日本人だけが海藻を分解できる腸内細菌を持っていると言われています。 一方、海草にはアマモやコアマモなどが含まれます。「草」とあるように、海草は種子植物の仲間で、 根、茎、葉を持ち、花を咲かせ、種を作ります。進化の過程で、海から陸へ上陸した被子植物が再び海へ戻ったものです。 動物でのクジラ、イルカのような位置付けです。英語ではseagrassと言います
磯焼けとは海中で海藻・海草が繁茂する藻場が消滅してしまう現象のことです。藻場を形成する海藻・海草たちが一斉になくなってしまう現象は古くより知られていました。 しかし多くの場合、その後しばらくして海藻・海草たちは復活していました。一方で、近年の磯焼けでは、海藻林が消失したあと長期にわたって再生されません。 磯焼けのあとの海はまさに砂漠のような状況になってしまいます。 磯焼けは単純に海藻・海草が失われるだけではありません。藻場を住処とし海藻・海草を餌とするサザエやアワビなど貝類もいなくなってしまいます。 また、イカなど藻場で産卵をする生き物や、ブリなど幼魚時代を藻場で過ごす生き物も減少してしまいます。 このため磯焼が発生すると多くの生き物を失うことになり、海の豊かさを失うことになります。 豊かな海を守るためには磯焼けした藻場を回復させなければなりません。 磯焼けの発生には、黒潮蛇行や海水温上昇など異常気象や環境汚染、ウニなど海藻を食べる生物の増加など、 さまざまな要因が複雑に絡みあっていると思われます。このため、残念ながら磯焼けを防ぐ効果的な解決策は見つかっていません。 多くの自治体や民間団体が、海藻を海に移植していますが、残念ながらなかなか藻場回復には繋がっていないのが現状です。 ところで、磯焼けという言葉はどこで生まれたか知っていますか?実は"磯焼け"とは静岡県伊豆地方で古くから使われていた方言だそうです。 近年のような使われ方は、1902年に静岡県伊豆東岸で藻場が消失する様をみて、 当時の海藻学の第一人者であった遠藤吉三郎博士が"磯焼け"と表現したのがきっかけと言われています。 また、静岡県の駿河湾相良沖にはかつてサガラメとカジメという褐藻が8000haを超える藻場を形成しておりましたが、 1990年代に磯焼けで消失してしまいました。他に例を見ない大規模な磯焼けの事例です。 不名誉なことに、磯焼けについて静岡県は日本で最も有名な地域の一つとなってしまっています。
サガラメは褐藻類(コンブ、ワカメなどの仲間)でアラメと近縁な種です。かつては静岡県相良地方で広大な藻場を形成していました。 サガラメのサガラは静岡県相良地方のことを指し、メは海藻の意味を持ちますから、まさに静岡を代表する海藻というべき存在です。 しかし、1990年代に発生した大規模な磯焼けにより県内のサガラメは絶滅してしまいました。相良の海はいまだ磯焼けから回復していません。 ところが近年、静岡県水産・海洋技術研究所(以下、県水技研)が駿河湾の海洋深層水を利用することでサガラメを人工培養することに成功しました。 この技術により陸上でサガラメを育て、成長したサガラメを海中に植えることができるようになりました。 しかし実際に移植をしてみると、サガラメはなかなか定着しません。移植したサガラメの多くは成長する前に流されてしまいました。 このため藻場を再生させるためには、サガラメの生態についてもっと知り、どうしたら海中にうまく定着するのかを考えてゆかなければなりません。 現在MaOI機構では県水技研と共同でサガラメの生態について研究しています。 サガラメを含む褐藻は、海の中の植物のように見えますが、陸上植物とは全く異なる生き物であり、その生態には未解明な部分が多いです。 MaOI機構と県水技研では、サガラメのゲノム解析や遺伝子発現解析、代謝物解析など遺伝学的、化学的研究を展開しており、 サガラメを海に戻し藻場を復活させる方法を探しています。藻場再生を通じて、静岡県の海の豊かさを守ることが私たちの目標です。
ここでは、静岡県の海岸で藻場の再生・保全活動に取り組んでいる団体や企業の皆さんにお話をお聞きして、その活動内容などを紹介します。