海の森づくり体験教室を開催しました!
2020年10月24日に開催した海の森づくり体験教室の様子を紹介します。
当日はよいお天気にも恵まれ、会場となった焼津市の「静岡県水産・海洋技術研究所」には小学生と保護者のペア20組・42名が集まり、海藻のサガラメの植えつけと海藻おしばづくりの体験をしました。
サガラメとは、駿河湾沿岸の吉田町から御前崎市までの海域に繁茂していた海藻で、ワカメと同じように食用にされてきました。このような海藻が茂っている場所を「藻場(もば)」と呼びますが、昭和60年頃から「磯焼け」と呼ばれる海藻が枯れる現象が藻場で発生し、今ではほとんど収穫されていません。
サガラメは水深2m程の岩場で育ちます。さらに深い5mのところにはカジメという海藻が育ちますが、こちらも磯焼けにより藻場が減っています。藻場がなくなると、それらを餌にしているアワビやサザエが取れなくなるほか、海水の浄化作用がなくなり海が濁ったり、魚の卵が産み付けられ稚魚が育つ環境も失われてしまうということも、今回一緒に学びました。
磯焼けの話を聞いた後は、施設の飼育棟前に場所を変えて、みんなでサガラメの植えつけ体験をしました。
20cm程に成長したサガラメの苗の根を、生分解性プラスチックの基板(海にとけて環境にやさしい)に固定します。静岡県水産・海洋技術研究所職員の吉川さんから植えつけ方の説明を受けると、参加者のみなさんは早速サガラメを手に取り植え付けを始めて、20分ほどで全ての植え付けが終わりました。植えつけられた基盤は1つの容器に集められましたが、基板から根が外れてしまうものはなく、みなさん上手に植え付けることができました。
講師をつとめた松本先生がいる榛南地域磯焼け対策協議会では、藻場を復活させる活動を行っています。カジメは、苗を取り付けたコンクリートブロックを海に沈めることで、生育の回復が確認されています。サガラメはカジメよりも浅い海域の岩場に根付くため、先にサガラメの苗を基板に取りつけ、その基盤を岩場に固定していきます。今回の体験で参加者のみなさんが取り付けたサガラメは、ダイバーさんたちの協力のもと、12月に海の岩場に固定される予定です。
次に体験したのは海藻おしばのハガキづくりです。海藻は大きく3種類に分類されます。緑色の「緑藻」、茶色の「褐藻」、赤い「紅藻」です。これらの色や形の違いを利用して、絵を描くようにハガキの上に並べて作品をつくります。
海藻おしばの作り方を教えてくださったのは、海藻おしば協会の会長・野田三千代さんと、協会員の川口さん。協会では日本各地で海藻おしば教室を開催し、「海の植物・海藻の美しさ」の啓発と、「楽しい海藻おしばづくり」の普及活動をしています。
参加者の各テーブルには、主に伊豆半島で拾った9種類の海藻が用意されました。春、波が高い翌日に海岸に行くと、たくさんの海藻が打ち上げられているそうです。海藻おしば協会の方は、こうした海藻を拾い集め冷凍保存して、おしばづくりをしています。
海藻おしばは、まず縮こまった海藻をトレーに入った真水の中でほぐします。その後は、濡らしたハガキの上に広げていきます。はさみで海藻をカットして長さや形を調整したり、広げた海藻をストローでくり抜けば、玉模様をつくることもできます。海藻の色や形からインスピレーションを膨らませて、思いおもいに並べます。子どもたちも、時には保護者に手伝ってもらいながら、自由な発想で素晴らしい作品を仕上げていました。
つくり上げた作品は乾燥させた後、ラミネート加工を施し、1週間ほどで郵送、各参加者の元に届けられます。
野田さんは「海藻が茂っている藻場はまるで森のようなんですよ。海藻おしばづくりを楽しんでもらいながら、海にも森があることを知って欲しい。そして、その森を守るためにも海を汚さないことが大切だと伝えていきたいですね」と話してくださいました。
私たちが普段はあまり意識することなく食べていた海藻。今回のサガラメの植えつけと海藻おしばづくりの体験は、海藻が茂る「海の森」は海をきれいにし、魚を育てる大切な環境になっているということを意識するきっかけとなるイベントになりました。
ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。