ミシマオコゼ科魚類のうち日本沿岸で最も普通にみられ、底曳網で漁獲されます[1]。ミシマオコゼ科の魚は砂に潜って生活し、砂から眼と吻部を出して獲物を待ち構えています。皮質突起を動かして、小魚を誘って捕食します[1]。生きた動物が近づくと何でも、瞬間的にまるのみするので、近くの砂やゴミまで吸い込んでしまいます[3]。
ミシマオコゼは強大な擬鎖骨棘(ぎさこつきょく)があることや前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)下縁の棘が3本であることで、他の近縁種であるアオミシマやキビレミシマと見分けられます[4]。写真の左側がミシマオコゼ、右側がアオミシマです。
和歌山県南部では水深約30mで刺網により成魚がとれ、水深20〜30mで底曳網により体長約5cmの若魚がとれます[2]。
クセがなく、淡白な白身で練製品に使われたり[2][3]、鍋や唐揚げなど、さまざまな調理法が紹介されています。
オコゼという名前がついていますが、いわゆるオコゼとは別の系統(スズキ目ミシマオコゼ科)になります。単に「ミシマ」「ムシマ」と呼ぶ地域もあり、これに形態の似ている「オコゼ」と組み合わされたものとも考えられています[5]。ミシマオコゼという名前の由来は諸説ありますが、『日本魚名の研究』では、淡路沼島を中心として呼称されるムシマジョロからの転成と想定しています[5]。
英名のstargazerは「星(star)を眺める人(gazer)」という意味もあるそうです。深海から星を眺めるなんて、ロマンチックな名前ですね。
レア度 ★(★の数が多いほどレアです)
1. 中坊徹次(編). 2020. 小学館の図鑑Z 日本魚類館. 小学館
2. 池田博美・中坊徹次. 2015. 南日本太平洋沿岸の魚類. 東海大学出版部
3. 益田一ほか(編). 1988. 日本産魚類大図鑑, 第二版. 東海大学出版会
4. 中坊徹次(編). 2013. 日本産魚類検索 全種の同定, 第三版. 1–3巻. 東海大学出版会
5. 渋澤敬三. 1959. 日本魚名の研究. 角川書店