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駿河湾深海魚の
ふか〜い話
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ミドリフサアンコウ

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ふか〜い話

フサアンコウ科は深海魚の象徴的な魚であるアンコウと同じアンコウ目の魚で、英語名ではsea toads、直訳すると海のカエルと言われています。
アンコウの分類は未だ議論されることが多いようですがフサアンコウ科については、現在の22 種の魚が知られており[1]、日本ではミドリフサアンコウ、ホンフサアンコウ、ハナグロフサアンコウの3種が見られるようです[2]。深海魚直送便で駿河湾の戸田で水揚げされたこの3種の写真を公開しています。
私たちの持つアンコウのイメージは、おそらく食用としてアンコウ鍋などに使われるアンコウ科のキアンコウ(ホンアンコウ)のもので、例えば上下に平たく潰れた体(縦扁という)、大きな頭と口、鱗のない柔らかい体、額から突き出るアンテナのような竿(誘因突起という)とその先端に提灯のようについている擬餌状体(エスカと呼ばれる)などがあげられるのではないかと思います。
フサアンコウの仲間も一見このようなイメージとそう変わらないように見えます。しかし文献等によると、頭部は扁平ではなく球状に膨らんでいたり、体は柔らかい皮膚で覆われているもののその表面は小さな棘が分布していたりと、アンコウ科の魚とは異なる点も多いようです[2]。アンコウのシンボルともいうべき誘因突起も、フサアンコウの仲間では短いです。また、誘因突起先端のエスカは、チョウチンアンコウのように光ったりはしませんが細かいヒゲのような毛でふさ状になっている特徴的な形をしています。フサアンコウの仲間では誘因突起は使用時を除いて、両眼の間にある窪みに格納されています[3]。フサアンコウ仲間の深海での生態はよくわかっておりませんが、ヒレのつき方や体型、また、水槽で腹鰭と胸鰭を使ってゆっくり歩く姿も目撃されており、活発に泳ぎ回るのではなく、海底でじっとして獲物を待ち構えるライフスタイルではないかと考えられているようです[4]。

ここでご紹介するミドリフサアンコウは橙赤色の体に緑色の円形の斑紋が散在しているのが特徴です。
眼と眼の間に見える黒いものが窪みの中に格納された誘因突起です。
また、ミドリフサアンコウは時折、大阪のフグ料理屋のマスコットのように大きく膨らみます。ミドリフサアンコウは撮影用ライトなど光の刺激を受けたときなどにこの行動を起こすようなので、警戒・威嚇の意味があるのではないかと考えられています[4]。同様の行動はホンフサアンコウでも記載されています(駿河湾深海魚ふか~い話のホンフサアンコウの稿を参照)。このため、体を膨らませるのはフサアンコウの仲間の共通の特技かもしれません。
動画は、飼育しているミドリフサアンコウに給餌している珍しいシーン。動画を提供していただいている青山沙織さんに聞いたところでは、眼の前にピンセットで餌を持っていってもなかなか食べないので大変なのだそうです。
また赤の色調と可愛らしい姿だからでしょうか、ミドリフサアンコウがスタジオジブリの作品「崖の上のポニョ」のポニョに似ているという感想もweb上でよく見かけます。
ミドリフサアンコウは食用とされているようで、味醂干しのほか、鍋にするとキアンコウよりおいしいとの記載もあります[5]。
レア度 ★(★の数が多いほどレアです)

詳しい情報

学名
Channax abei LeDanois, 1978
和名
ミドリフサアンコウ
英名
Abe's Frogmouth [6]
分類群
アンコウ目フサアンコウ科[5]
サイズ
30cm
形態的特徴
吻の誘因突起は短く、その先端で疑餌状体は小さくて薄く、楕円形を呈する。体は橙赤色で瞳孔よりは小さい円形緑色斑が散在する。体長20-24cm、大きいもので33cmに達する。[5][7]
生態
富山湾、九州北西岸、青森県鮫角、千葉県銚子〜魚釣島北部の東シナ海大陸棚縁辺ー斜面域、朝鮮半島南岸、台湾。水深75-508m[2][5][7]

出典

1. Nelson et al. 2016, Fishes of the World 5th ed
2. 池田博美、中坊徹次 南太平洋沿岸の魚類 
3. Carpenter and Niem (eds), 1998 Species identification guide for fisheries purposes, Rome, FAO.
4. 佐藤孝子 著 深海生物大事典  成美堂出版
5. 益田一 (編) 1988 日本産魚類大図鑑 第二版 東海大学出版
6. IUCN Red List of Threatened Species
7. 中坊徹次 小学館の図鑑Z 日本魚類館 小学館

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